古物商許可の全体像です。条文と数字は2026年9月14日に法令・警察庁・都道府県警の公式ページで確認したものだけを載せています。各章の末尾に出典を付けました。自分の場合だけ知りたいときは、上の「あなたの場合を診断する」へ。
01 古物とは何か(新品でも古物になる)
「この法律において『古物』とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類…で政令で定めるものを除く。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。」
古物営業法 第2条第1項
- 3つに分かれます。①一度使用された物品 ②使用されていないが、使用のために取引された物品 ③①②に幾分の手入れをしたもの。
- ②が実務上の落とし穴です。未使用・新品でも、いったん流通に乗った物は古物になりえます。「新品だから古物ではない」とは条文上なりません。
- 大型機械類(総トン数20トン以上の船舶、航空機、鉄道車両等で政令で定めるもの)は古物から除かれます。
出典:古物営業法(e-Gov)愛知県警 古物営業法の解説(2026-09-14確認)
02 許可が要るかどうかの線引き
「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」
古物営業法 第2条第2項第1号(1号営業の定義)
次の4つを満たすと1号営業にあたり、都道府県公安委員会の許可が要るとされています。
- ①対象物が「古物」にあたる:未使用品でも01の②に当たれば古物です。
- ②売買・交換・委託売買/交換を行う:貸すだけ(レンタル)でも、仕入れが古物の買取なら該当しえます。
- ③「売却のみ」「自分が売った物の買戻しのみ」ではない:=他人から買い取る工程が入るかどうかが分水嶺です。
- ④営業性がある(反復継続・利益目的):ここは実態判断で、管轄警察署の判断領域です。
03 許可が要らないとされている例
都道府県警が公表しているQ&Aの記載です。個別案件の適法性を保証するものではありません。運用は管轄警察署によって異なります。
| ケース | 各県警Q&Aの説明 |
|---|---|
| 自分が使った物・自分用に買ったが使わなかった物を売る | 許可不要。ただし「自分用」と称して実際は転売目的で仕入れているなら許可が必要と明記されています |
| 自分が売った相手から買い戻して、また売る | 許可不要(法2条2項1号の括弧書き) |
| 無償でもらった物を売る/処分手数料をもらって引き取った物を売る | 許可不要。買取代金の支払いがなく、盗品の換金に使われるおそれが低いため |
| 自分が海外で買い付けて輸入した物を国内で売る | 許可不要。国内での盗品混入がないため |
| 他の業者が輸入した物を国内で買い取って売る | 許可が必要。国内で買い取る工程が入るため |
| 新品を買ってレンタルする | 許可不要 |
| 古物を買い取ってレンタルする | 許可が必要 |
04 13の品目区分
規則第2条が古物を13の区分に分けています。申請のときに、取り扱う区分を申告します。
- 美術品類/衣類/時計・宝飾品類/自動車/自動二輪車及び原動機付自転車/自転車類/写真機類/事務機器類/機械工具類/道具類/皮革・ゴム製品類/書籍/金券類
- 許可の種類が区分ごとに違うわけではありません。申請時に取り扱う区分を申告する形です(愛知県警Q&A)。
- あとから品目を足す場合は、取扱古物の区分が法5条1項3号の事項なので、法7条2項の変更届(変更の日から14日以内)の対象になります。書換えを伴わなければ手数料不要とされますが、運用は要確認です。要確認
- 実務では「主として扱う1区分」+関連区分を最初から申告するやり方が紹介されますが、実態のない区分の申告には説明を求める運用があるとされます。
05 申請先・手数料・期間
| 許可権者 | 都道府県公安委員会(法3条) |
|---|---|
| 申請先 | 主たる営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全担当課(防犯係) |
| 手数料 | 19,000円 |
| 標準処理期間 | 40日(行政庁の休日を含まない) |
| 許可証の書換え | 1,500円(神奈川県警の例) |
| 許可証の再交付 | 1,300円(神奈川県警の例) |
- 審査基準:「古物営業法第4条各号の欠格要件に該当しないなど古物営業法を遵守し、適正な営業を期待できるときに許可する」(東京都公安委員会 審査基準)。
- 標準処理期間の40日に、補正にかかる期間は含まれません。書類の不備で戻されると、そのぶん延びます。
- 許可が下りるまで、古物の買い取りは始められません。
- 手数料が不許可・取下げでも返還されない点は、行政書士の解説では一般に説明されていますが、都道府県警の公式ページで明記された記述は確認できませんでした。納付方法(収入証紙/キャッシュレス)も都道府県で異なります。要確認
06 そろえる書類
警視庁・愛知県警・神奈川県警の案内から共通して読み取れるものです。都道府県ごとに様式・部数・追加書類が違います。
個人で申請する場合
- 古物商許可申請書(別記様式第1号 その1〜その4。どの「その◯」を使うかは都道府県ごとに違います)
- 略歴書(最近5年間)… 本人+管理者
- 本籍が記載された住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)… 本人+管理者
- 誓約書(欠格事由に該当しない旨)… 本人+管理者
- 身分証明書… 本籍地の市区町村長が発行するもの。運転免許証やマイナンバーカードとは別物です
- URLの使用権原を疎明する資料(ホームページを使う場合のみ)
法人で申請する場合(上記に加えて/置き換えて)
- 定款/登記事項証明書
- 略歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書 … 役員全員+管理者
- 「登記されていないことの証明書」は、警視庁・愛知県警・神奈川県警の現行の必要書類一覧には記載がありません(2026-09-14確認)。ただし運用として求める県がないとは断言できません。要確認
- 営業所の使用権原に関する書類(賃貸借契約書の写し・使用承諾書)は、一般に求められることがあると説明されますが、上記3警察の必要書類欄には明記されていませんでした。要確認
07 許可が受けられない場合(欠格事由)
法4条。ひとつでも当てはまると、公安委員会は許可をしてはならないとされています。
| 号 | 内容(要旨) |
|---|---|
| 1 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 2 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、又は法31条の罪・刑法235条(窃盗)・247条(背任)・254条(遺失物等横領)・256条2項(盗品等有償譲受け等)の罪を犯して罰金の刑に処せられ、執行を終わった日等から5年を経過しない者 |
| 3 | 集団的または常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者 |
| 4 | 暴力団対策法の命令・指示を受けた者で、3年を経過しないもの |
| 5 | 住居の定まらない者 |
| 6 | 古物営業の許可を取り消され、5年を経過しない者 |
| 7 | 取消しに係る聴聞の公示日から処分日までの間に許可証を返納した者で、5年を経過しないもの |
| 8 | 心身の故障により業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めるもの |
| 9 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者(例外あり) |
| 10 | 営業所ごとに管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者 |
| 11 | 法人で、その役員のうちに1号〜8号のいずれかに該当する者があるもの |
- 10号が実務上の関門になりやすいとされます。実体のない営業所(バーチャルオフィス等)は「管理者を選任すると認められない」と評価されうる、という説明をよく見かけますが、公式の明文基準は確認できませんでした。要確認
08 買い取るときの本人確認
許可を取ったあと、取引のたびに発生する義務です。
- 原則(法15条1項):相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認する/それらが記載され本人の署名がある文書の交付を受ける/電子署名がされた電磁的記録の提供を受ける/規則で定める非対面取引の確認方法をとる、のいずれか。
- 免除される場合(法15条2項):対価の総額が1万円未満の取引/自己が売却した物品をその相手方から買い受ける場合。
ただし、次の古物は1万円未満でも確認義務・帳簿記載義務の対象です(規則16条2項)。
- 自動二輪車及び原動機付自転車(汎用部品を除く部分品を含む)
- エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ(令和7年10月1日追加)
- 家庭用コンピュータゲームのプログラムを記録した物(ゲームソフト)
- 光学的方法により音又は影像を記録した物(CD・DVD等)
- 電線(令和7年10月1日追加)
- グレーチング(金属製のものに限る)(令和7年10月1日追加)
- 書籍
- 警視庁の説明では、「電線」からLANケーブル・テレビ接続ケーブル・延長コード・充電ケーブル等の家庭用製品は除かれ、グレーチングはコンクリート製を含まないとされています。金属盗対策としての改正です。
- 不正品の疑いがあれば、直ちに警察官に申告する義務があります(法15条3項)。
- 非対面での買取には、決まったやり方があります。本人限定受取郵便、転送不要書留の到達確認、公的個人認証など。免許証の画像を送ってもらうだけでは足りない場合があります。
09 帳簿・標識・管理者
- 帳簿(法16条・18条、規則17条):取引の年月日、古物の品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、法15条1項のどの措置をとったかの区分を記録します。様式は別記様式第15号・第16号(電磁的記録も可)。最終記載の日から3年間保存。滅失・亡失したら直ちに警察署長へ届け出ます。
- 標識(プレート)(法12条1項、規則11条):営業所・仮設店舗ごとに、公衆の見やすい場所に、規則で定める様式の標識を掲示します。
- 管理者(法13条1項):営業所ごとに責任者を1人選任します。個人事業で本人が兼ねることは可能とされています。
出典:古物営業法(e-Gov)
10 ネットで売るとき
ここが個人事業に効きます。令和6年4月1日施行の改正で、小規模でも表示義務から逃れられなくなりました。
「古物商又は古物市場主は、その事業の規模が著しく小さい場合その他の国家公安委員会規則で定める場合(その者が特定古物商である場合を除く。)を除き…その氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称及び許可証の番号…を…公衆の閲覧に供しなければならない。」
古物営業法 第12条第2項
- 除外されるのは、①常時使用する従業者の数が5人以下の場合 ②管理するウェブサイトを有していない場合(規則13条の2第1項)。
- ただし「特定古物商」はこの除外から外されています。特定古物商とは、ウェブサイトで公衆の閲覧に供し、規則で定める通信手段で申込みを受ける方法を用いる古物商のこと(法8条の2)。
- =ネットで古物の売買をするなら、従業員ゼロの個人事業主でも、サイトに「氏名/許可した公安委員会名/許可証番号」の掲載が必要とされています。「ひとりだから免除」は使えません。
- URLの届出も必要です(法5条1項6号)。申請時または変更届出時に届け出ます。届出にはURLの使用権原を疎明する資料(whois、サーバー契約画面など)の添付が求められます。
- フリマアプリ・モール(メルカリ、ヤフオク等)の出品ページが「自己が管理するウェブサイト」に当たるかどうかは、公式の明示的な回答を確認できませんでした。使うサービス名と画面を管轄署に見せて確認してください。要確認
11 営業所と、イベントでの買取
「古物商は、その営業所又は取引の相手方の住所若しくは居所以外の場所において、買い受け、若しくは交換するため、又は売却若しくは交換の委託を受けるため、古物商以外の者から古物を受け取つてはならない。」
古物営業法 第14条第1項
- 例外:仮設店舗。イベント会場等で営業する場合は、あらかじめ(その3日前までに)日時・場所を、その場所を管轄する公安委員会に届け出ます(同条ただし書)。愛知県警Q&Aによれば、主たる営業所の管轄署経由でも可とされています。
- イベント会場で「買い取る」形をとった瞬間に、この条文が効きます。売るだけなら14条は買受け側の規制なので当たりませんが、そもそも仕入れの工程で許可の要否が決まります(02章)。
- 行商(法11条):行商・競り売りをするときは許可証を携帯。従業者に行商をさせるときは行商従業者証を携帯させます。相手方から求められたら提示します。行商をするかどうかは申請書の記載事項なので、「行商する」で申請しておくのが一般的とされます。
- 営業所として認められにくいとされるケース:賃貸物件で契約上の使用目的が「居住専用」/バーチャルオフィス・レンタルオフィス/短期のシェアスペース。ただしこれらを一律に不可とする公式な明文基準は確認できませんでした。運用差が大きい領域とされます。要確認
12 変更があったときの届出
| 変更する内容 | 期限 |
|---|---|
| 営業所の所在地を変更しようとするとき | あらかじめ(規則5条は「当該変更の日から3日前までに」) |
| その他の事項(氏名・住所、取扱古物の区分、管理者、行商の別、URL、法人役員 等) | 変更の日から14日以内(登記事項証明書を添付すべき場合は20日以内) |
| 許可証の記載事項に関わる変更 | 別途書換申請(別記様式第6号+許可証) |
- 提出は営業所の所轄警察署長を経由します。営業所が複数ある場合は、いずれか1か所の所轄署経由で足ります(規則5条)。
- 許可証の返納(法8条):営業を廃止したとき、許可が取り消されたとき、再交付後に亡失した許可証を発見したときは返納します。廃止により許可は効力を失います。
13 罰則
- 法31条:無許可営業、偽りその他不正の手段による許可取得、名義貸し、営業停止命令違反 → 3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 法33条:営業の場所制限違反、確認措置の不履行、帳簿の不記載・虚偽記載、保管命令違反等 → 6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
- 法35条:届出義務違反、許可証不携帯、標識不掲示、立入り拒否等 → 10万円以下の罰金
14 ほかの制度との関係
| 制度 | 関係 |
|---|---|
| 特定商取引法 | 古物商許可とは別の義務。ネット通販をするなら、特商法の通信販売の広告表示(事業者名・住所・電話番号等)が別途必要です。古物営業法の「氏名・公安委員会名・許可証番号」の表示とは、根拠条文も記載項目も別物です |
| 開業届(所得税) | 別の手続きです。許可があっても開業届の代わりにはならず、逆も同じ |
| インボイス | 免税事業者のまま許可を取ることは可能です(許可要件に課税事業者要件はありません)。買取の仕入税額控除(古物商特例)は税務の論点です |
| 個人情報保護法 | 法15条の確認義務で、相手方の住所・氏名・職業・年齢を取得し3年保存することになります。=個人データの取得・保管が必然的に発生します |
- 古物商をやる=個人情報を3年持つことが、法律上の義務になります。「相手に個人情報を持たせない」という設計をしているなら、ここは正面からぶつかる論点です。始める前に決めてください。
15 このページでは確定できない項目と、相談先
公開情報だけでは決まらない項目です。ここに当たる話は、このページだけで判断しないでください。
- 手数料が不許可・取下げでも返還されない旨の、都道府県警による明文の記述
- 営業所として認められない場合の公式な明文基準(バーチャルオフィス等)
- フリマアプリ・モールの出品ページが、ウェブサイト表示義務・URL届出の対象になるかの公式見解
- 品目区分の追加届出に手数料がかかるかどうかの、都道府県別の運用
- 「登記されていないことの証明書」を運用として求める県があるかどうか
相談先
- 営業所を管轄する警察署 生活安全担当課(防犯係)。許可権者側の運用は、ここでしか確定しません。行く前に電話で予約すると確実です。
- 行政書士(古物商申請に慣れた人):書類作成の代行、営業所要件の事前相談。標準処理期間40日に補正期間は含まれないので、一発で受理される価値は大きいです。
- 弁護士:「自己使用品の売却」と「転売目的の仕入れ」の境界が争いになりうる事業モデルを組む場合。無許可営業は法31条で刑事罰が付きます。
- 税理士:古物商特例(仕入税額控除)、免税事業者のままでの買取の扱い。